この記事は訪問介護事業所の月末を例にします。他のサービスの記録項目や手順へ、そのまま当てはめるものではありません。まず人が予定・サービス実績・提供記録の対応を確かめて表をそろえます。AIに任せられるのは、その表に見える空欄や差を確認候補として列挙・説明するところまでです。「実績が正しい」「請求できる」という判定は候補一覧からは出せません。
前提は、三つの情報を表として取り出せることです。紙の記録しかない場合や、訪問を結び付ける項目がない場合は、先に原資料の確認・整理が必要です。以下は実在の利用者や事業所の情報を含まない架空の編集見本で、AIを実行した結果や削減効果ではありません。
予定・実績・記録を並べると、何が見つかるか
同じ月の訪問を一行ずつそろえると、「予定はあるが実績がない」「実績はあるが記録が見当たらない」など、原資料へ戻るべき箇所を見つけられます。時刻の差だけで誤りと決めず、確認候補として扱います。

次の表のA〜Dは説明用の行番号で、利用者や職員を表しません。「なし」は、この見本の表に該当行がないという意味です。
| 行 | 予定 | 実績 | 提供記録 | 洗い出す確認候補 |
|---|---|---|---|---|
| A | 10/1 9:00 | 10/1 9:30 | 10/1 9:30 | 予定から時刻変更。変更経緯を確認 |
| B | 10/2 9:00 | なし | なし | 中止か、実績・記録の入力漏れか確認 |
| C | なし | 10/3 9:00 | 10/3 9:00 | 予定にない訪問か、予定の反映漏れか確認 |
| D | 10/4 9:00 | 10/4 9:00 | なし | 記録の未入力か、別の記録への紐付けか確認 |
たとえばBを「未提供」と確定してはいけません。予定変更の連絡、当日の原記録、実績入力の状態を人が調べます。Dも、記録が別の画面に保存されている可能性があります。候補には行番号・差の種類・照合した元データの参照先を付け、推測した理由を事実として書かない形にします。
厚生労働省の指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準・第19条は、指定訪問介護について、提供日・内容などの記載と具体的なサービス内容等の記録を定めています(2026年10月9日確認)。Dのように記録行が見当たらないとき、原記録の所在を確認する理由に関わる条文です。この条文だけで上の四つの差の請求可否は判定できません。
突き合わせる前に、三つの表を取り出せるか
予定・実績・記録のそれぞれから、同じ訪問に戻れる項目を取り出せるかを確かめます。CSVは表データを書き出す形式の一つです。製品にその出力機能があるとは限らないため、使用中の記録・請求ソフトで実際の出力項目を確認してください。

| 表 | 照合に使う最小項目の例 | 元へ戻るための項目の例 |
|---|---|---|
| 予定 | 日付、予定時刻、サービスの区分、訪問を識別する内部番号 | 予定表の行番号・更新日 |
| 実績 | 日付、実施時刻、サービスの区分、対応する内部番号 | 実績表の行番号・更新日 |
| 提供記録 | 日付、記録された時刻、対応する内部番号 | 記録ID・記入状態 |
これは本記事の照合設計であり、法定の必須項目一覧ではありません。「内部番号」はソフトに訪問ごとの識別子がある場合の例で、「サービスの区分」も出力上の区別用項目を指します。どちらも全製品にあるとは限らず、この記事で法令上の区分を指定するものではありません。番号が三つの表で共通でないなら、日付と時刻だけで機械的に結合すると、同じ日に複数回訪問した行を取り違えます。その場合は、事業所の担当者が対応表を作るか、該当行を手で確認します。記録本文の病状や生活状況は、この照合見本には不要です。
紙しかない場合は、事業所内で読めない文字・追記・ページ抜けを原紙と照らし、必要な項目を表に起こせるか判断します。**原紙の画像を外部AIへ送る手順は、この方法に含めません。**電子化した表も原紙への参照を残します。表に取り出せない状態なら、AIによる一括の洗い出しは見送ります。
AIの候補を、誰が何で確かめるか
三表の行を同じ訪問ごとに対応付けるのは、元データを確認できる人の作業です。単純な空欄・時刻差の抽出には表計算や既存ソフトのチェック機能も使えます。AIを試すなら、対応を確かめた表だけから差を列挙し、確認候補の説明と参照行を作る補助に置きます。原資料にない中止理由や算定区分を補わせません。

試すときは、上の架空表A〜Dだけを貼り、次の短い指示を添えます。実在する利用者・職員・事業所のデータは貼りません。
表A〜Dだけを読み、AからDまで各行について「行番号/表で見える差/参照した表と行(行がない場合は対象期間)/人が原資料で確かめる点」を一行ずつ書いてください。差がない行もその旨を書き、行を飛ばさないでください。表にない中止理由、訪問実施の確定、請求・算定の可否は推測しないでください。
行Dに対する出力形式の見本は「D/実績あり・記録行なし/実績D、提供記録の対象期間/記録の所在を確認」です。「記録漏れ確定」「請求不可」などは書きません。
出力後はA〜Dを一行ずつ原表に戻って照合します。たとえばAIがBを「中止確定」と書いたら、表に根拠がないため「中止か、実績・記録の入力漏れか確認」に直します。Dを落としたら、実績Dと提供記録Dの「なし」を原表で確かめ、候補へ追加します。この訂正も候補一覧の修正であり、訪問や請求についての最終判断ではありません。
候補一覧を受け取ったら、まず記録を扱う職員が原記録と変更連絡を開き、訪問の有無・時刻・記録の所在を確認します。次に事業所で決めた確認責任者が修正内容と元の行を照合し、請求担当者が確認済みの実績を請求ソフト上で再確認します。この順序は本記事の運用例であり、職名や承認手順は事業所ごとの規程に合わせます。同じ人が複数の役割を担う場合も、候補ごとに確認者・確認日・参照した原資料を残し、請求へ反映する前に原資料と照合します。AIの候補を元の記録へ自動で上書きしません。
算定や加算の適否は、この三表の一致だけでは判断できません。必要な判断は、対象サービスの最新の告示・通知、保険者への照会先、請求ソフトのベンダーが示す仕様を確認し、事業所の担当者が行ってください。
月末の時間がかかる場所も分けて測れます。候補を探す時間と、原記録を調べて直す・判断する時間を別々に記録してください。AIで前者が短くなっても、後者の確認は残ります。削減時間の実測・試算はここでは示していません。
利用者情報を入力せずに、照合の型を試す
最初の試行には、上の表のような実在しない行だけを使えます。利用者名を消した実データも、ほかの項目や記録本文から個人が分かる可能性があります。氏名・病歴・身体状況・生活の記述を、一般向けAIの入力欄へ貼り付ける前提にはしません。

個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けFAQは、介護関係記録に記載された病歴や障害の事実などを、取扱いに特に配慮を要する「要配慮個人情報」の例に挙げています。また同委員会の生成AIサービス利用に関する注意喚起・別添1は、事業者が個人情報を含む指示文を入力する際、利用目的に必要な範囲かを十分確認するよう示しています。本人の同意なく個人データを入力し、応答以外の目的で扱われる場合には、法違反となる可能性があるとも示しています(いずれも2026年10月9日確認)。
実データを使うか検討する際は、事業所の情報管理責任者が、利用する環境・契約・入力範囲・保存先・学習への利用・アクセス権を確認します。これらは確認事項の例であり、項目を列挙・確認しただけで適法性や安全性が担保されるわけではありません。個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンスは安全管理措置、従業者・委託先の監督を扱い、外国で個人データを取り扱う場合の外的環境の把握にも触れています(2026年10月9日確認)。利用形態に応じて実態を確認し、個別の適法性は専門家に相談してください。記録の入力方法や申し送りの見直しが先なら、介護記録と申し送りのAI活用で工程を分けて検討できます。