「面会は何時からですか」と「母は今日、食事を取れていますか」は、同じ家族からの問い合わせでも分担を変えます。AIを使うのは、事業所が内容と有効期間を確認した公開案内から、返答の定型文を事前に下書きするところまでです。空き状況や費用の確認、本人の様子・体調の説明、苦情や不安への対応は職員が担います。
想定するのは、家族が施設WebサイトのFAQボタンを選ぶと職員が承認した固定文が表示され、電話・対面の相談は職員が受ける形で、その場でのAI生成や個別情報の収集は行いません。公開原稿と照合した文だけを家族へ渡すため、AIの作業と表示を分けます。
| 用件 | 分担の線 |
|---|---|
| 面会時間・持ち物・手続きの案内 | AIで定型文の候補を作り、職員が確認してから表示する |
| 空き状況・費用の目安 | 最新の状況と条件を職員が確認する |
| 本人の様子・体調 | 担当職員が説明する相手・内容を確認する |
| 苦情・不安の訴え | 職員が話を受け止め、対応を引き受ける |
これは、入所系の介護事業所で検討する分担例です。法令で定められたAIの業務区分ではありません。以下の公開案内、質問、返答、引き継ぎメモはすべて架空の編集見本で、実在施設のルールや家族との会話、実際に試したAI出力ではありません。
面会時間・持ち物・手続きは、確認済みの公開案内から答える
AIには、事業所が家族向けに公開している案内文を、短い返答の候補へ事前に整える仕事を任せます。面会の時間帯や受付方法を説明する範囲にとどめ、予約の成立や、その日の面会可否まで確定させません。

短い原文で用件ごとに分かれていれば、AIを使わず職員がそのまま写して定型文にできます。AIで文案を作る余地があるのは、長い公開案内から質問ごとの該当部分を取り出して並べ直す場合です。以下はその編集作業の見本で、時間削減を測った結果ではありません。
まず職員が、回答に使う原稿をそろえます。次は架空の事業所が作成・確認した公開案内という設定です。時間や持ち物は説明用の仮定で、他の施設へそのまま適用するものではありません。
公開案内G1「ご家族の面会について」:面会で来所されるご家族へ、時間帯、持ち物、受付の流れをまとめてご案内します。面会時間は14時から16時です。来所したら入口の受付へお声がけください。持ち物として上履きをお持ちください。面会を希望される場合は、来所前に受付へ電話でご相談ください。この案内は面会の基本事項をまとめたものです。ご本人の様子や体調についての質問、入所の空き状況や費用の相談、説明についての苦情や不安は、受付から職員へおつなぎします。時間帯を確認する際は、来所前の電話相談も併せてご確認ください。持ち物と、到着後に受付へ声をかける手順も、来所の準備としてご確認ください。
原稿の確認日:2026年10月14日。確認者:案内管理担当。回答に使える期間:2026年10月14日から31日まで。ただし、案内変更があれば期間内でも使用を止めます。
この原稿だけを使う、文案作成の指示は次の形です。家族から届いたメール全文や、個人の情報は添えません。
公開案内G1だけを使い、施設WebサイトのFAQボタン用に、①「面会は何時からですか」②「面会に何を持っていけばよいですか」③「着いたら、どこへ行けばよいですか」の3つの定型文候補を作ってください。各質問に該当する記述を抜き出し、重複する説明をまとめてください。①には14時から16時という時間と、来所前に受付へ電話で相談する条件を必ず残してください。②の品名と③の受付場所・手順は変えないでください。各候補に参照したG1の記述を職員の照合用として付けてください。予約の成立、当日の面会可否、原稿にない条件は補わず、個別の相談への回答も作らないでください。
3つの定型文の編集見本(著者作成。実際のAI出力ではありません)
- 質問「面会は何時からですか」→「面会時間は14時から16時です。来所前に受付へ電話でご相談ください。」(確認元:G1の面会時間・来所前の電話相談)
- 質問「面会に何を持っていけばよいですか」→「上履きをお持ちください。」(確認元:G1の持ち物)
- 質問「着いたら、どこへ行けばよいですか」→「入口の受付へお声がけください。」(確認元:G1の到着後の受付手順)
職員は候補文とG1を照合します。たとえば「面会時間は15時から16時です」という候補なら、開始時刻が変わり、来所前の電話相談も抜けています。14時から16時へ直し、電話相談の条件を戻した上で、上の①の文にします。この誤文も照合を説明するための架空例で、実際にAIが間違えた記録ではありません。
照合用の参照記述は内部に残し、確認済みの文を「面会時間」「持ち物」「受付手順」のFAQボタンに登録します。家族向けには定型文と職員への相談窓口を表示します。
空き状況と費用は、最新の条件を職員が確認する
「今、入れますか」「費用はいくらですか」には、職員がその時点の情報を確認して答えます。公開中の案内を見せることと、希望日の受け入れや個別の費用を確定することは分けます。

古い空き状況を使って「利用できます」と答えても、その情報だけでは希望日の受け入れを確定できません。費用も、確認する事業所・サービス・利用条件をそろえずに金額を返すと、問い合わせた家族の条件に合う見積もりか分かりません。ここでは実額や相場を置かず、職員へ確認を渡します。
職員窓口へ案内する編集見本
質問:「来月から入所できますか」
返答:「ご希望の時期の受け入れについては、職員が確認します。入所相談窓口へお問い合わせください。」
質問:「月の費用の目安を知りたいです」
返答:「費用の目安は、入所相談窓口の職員が利用条件を確認してご案内します。」
ここでの「入所相談窓口」は見本の呼び名です。使う前に、事業所で実際に受ける窓口名・連絡先へ置き換えます。公開料金表があっても、掲載場所の案内までにとどめ、AIに家族の条件を聞き取らせて合計額を計算する流れにはしません。
希望時期などの聞き取りは既存の職員受付の手順に沿って行い、担当者が最新の空き状況・料金資料を確認します。担当者や更新のタイミングが決まっていない情報は、文案用の原稿へ入れません。
「母の様子は?」は職員へ。利用者情報をAIに渡さない
本人の食事、生活の様子、体調などの質問は、公開案内から切り離して担当職員へ回します。回答を作るために、利用者の記録や健康情報をAIへ入力・参照させません。

職員が受けた問い合わせへの返答見本
家族:「母は今日、食事を取れていますか」
受付職員:「ご相談として受け付けます。説明できる内容と連絡方法は、担当職員が確認してからご案内します。」
この返答は、説明する相手や内容を受付で確認できていない場合の職員の受け答えです。説明対象として確認済みの家族には、担当職員が事業所の手順に沿って説明します。電話のたびに同意を取り直すという提案ではありません。
個人情報保護委員会・厚生労働省の医療・介護関係事業者向けガイダンス「家族等への病状説明」は、本人に、説明する家族等の対象者をあらかじめ確認し、同意を得ることが望ましいとしています(2026年10月14日確認)。意識不明や判断能力に疑義がある場合などは扱いが異なります。個別の情報提供は、担当職員や情報管理責任者がこのガイダンスに沿って確認し、迷う点は厚生労働省のガイダンス一覧と照会先も参照します。
利用者の個別情報・健康情報・メール全文・通話録音をAIへ渡さず、問い合わせの分類にも使わないのは、公開案内から始めるための安全側の運用提案です。法令がAIへの入力を一律に禁止しているという説明ではありません。FAQには自由入力欄を設けず、本人の状態については職員窓口へ案内します。
個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(2023年6月2日)・別添1は、個人情報を含む指示を入力する際、特定した利用目的に必要な範囲かを十分に確認するよう示しています(2026年10月14日確認)。
急ぎの連絡・緊急連絡も、このFAQの対象外です。通常の折り返し待ちに置かず、事業所で決めた既存の緊急連絡経路へ直ちにつなぐ運用を提案します。AIに緊急性や対応方針を判定させません。
苦情・不安には、定型案内で会話を終わらせない
「説明に納得できない」「様子が分からず心配だ」という訴えは、職員が話を受け止めて対応を引き受けます。面会時間の案内を返すだけで終えず、相談を受ける窓口へつなぎます。

不安を受けたときの編集見本
家族:「面会できない間の様子が分からず、心配です」
受付職員:「ご心配な点を相談として受け付けます。説明する相手や内容を確認してから、担当職員への連絡方法をご案内します。」
苦情を受けたときの編集見本
家族:「前に聞いた説明と違います。責任者と話したいです」
受付職員:「説明についてのご相談として受け付けます。責任者が対応できるかを確認してから、連絡方法をご案内します。」
返答に「ご安心ください」「問題ありません」と足して、確認していない状態を保証しません。苦情の正しさや対応方針も、その場の定型文で決めません。
受付職員の引き継ぎメモは、たとえば「用件:説明についての相談/希望:責任者との会話/引き継ぎ先:責任者/状態:まだ受け取りを確認していない」と状態を分けます。記録には事業所内の既存の連絡手順を使います。
担当者が不在なら既存手順の代わりの連絡先を確認し、受け取りの確認前は対応完了にしません。折り返し時刻も、担当者に確かめず約束しないでください。
公開案内が空欄・未確認・期限切れなら回答を止める
面会時間や持ち物でも、使える原稿がなければ、その案内を答える定型文の準備と表示を止めます。代わりに、確認済みの職員窓口への案内を表示します。空欄、確認者不明、有効期間外、変更後に照合していない原稿は使いません。

冒頭のG1には確認者と有効期間を置きました。期限はこの編集見本の管理方法で、公的な一律の更新周期ではありません。事業所で、どの案内を誰が確認し、いつまで使えるかを決めます。
| 原稿の状態 | 文案の準備・表示前に行うこと |
|---|---|
| 持ち物欄が空欄 | 品名を推測せず、その用件を職員窓口へ案内する |
| 面会時間の確認者が不明 | 確認済みとして使わず、原稿の管理担当へ戻す |
| 有効期間を過ぎた | 以前の時間を表示せず、原稿と対応する定型文を使用停止にする |
| 案内変更後、旧版が残っている | 旧版の使用を止め、公開ページと回答文を照合する |
| 公開ページと回答用原稿の内容が違う | どちらかをAIに選ばせず、職員が正しい原稿を確定する |
停止条件は、AIへの文案作成の指示だけに任せません。原稿を管理する職員が使用可否を決め、無効な原稿に対応する定型文を表示対象から外します。変更を決めた時点で旧案内を止め、新しい原稿と定型文を照合してから表示を再開します。
原稿が使えないときの編集見本
質問:「面会は何時からですか」
避ける返答:「通常は午後からなので、14時ごろにお越しください。」
置き換える返答:「最新の面会時間は、受付へ電話でご確認ください。」
文案を準備する際に、AIに他の施設の面会時間を探させたり、以前の返答から補わせたりしません。確認済みの原稿が使えない間は、上の見本のような職員への案内文を用意して表示します。受付の連絡先自体も確認できていないなら表示を止め、管理担当が窓口情報を直します。
最初の点検は、自事業所の面会案内を上の表の条件に照らすところからです。使える原稿がそろった用件だけ、定型文を準備してください。