AIに作業の一部を任せる前に、その担当者が短くなった時間で進める既存の仕事を1種類決めてください。ここではそれを「振替先」と呼び、何を1件の完了と数えるかまで決めます。

この記事は、同じ人数のまま、現在の担当者が自分の業務の範囲で後回しの仕事に着手する場合を扱います。人員削減や配置転換、雇用条件の変更を判断する際は、社内の人事担当や社会保険労務士に個別の条件を確認してください。

浮いた時間の行き先を先に決める

振替先が空欄でも、時間がまったく使われなくなるわけではありません。通常の依頼や確認作業へ回ることもあります。ただ、どの仕事に回ったかを決めずに始めると、狙った仕事が進んだかを後から確かめにくくなります。

短くなる作業から通常業務へ流れるカードと、まだ行き先が決まっていないトレー

パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」は、生成AIで削減できた**時間のうち61.2%が仕事に使われ、その仕事に使われた時間の75.4%**が日常の業務に充てられたと報告しています(2026年2月3日公開、2025年10月にインターネット調査、「生成AI活用の効果と限界」)。これは利用者の回答に基づく時間の配分で、人数の割合ではありません。

この調査は、振替先を先に決めると成果が増えると検証したものではありません。導入前には「短くしたい作業」と「振替先」を対で書き、後から実際の使い道を確かめられるようにします。振替先は、後回しになっている既存業務のうち、同じ担当者が着手でき、完了を既存の記録で確かめられる仕事から選びます。「顧客満足度を上げる」のように完了を数えられない目標は、作業名と完了条件まで具体化します。

対象作業、振替先、担当者、1件の完了条件を一行ずつ書き、本人と責任者に確かめてください。振替先が決まらないなら、AIを試す目的を作業品質や負担の確認に絞ります。

架空例|問い合わせ要約から保留中の見積確認へ

架空の営業担当・佐藤さんが行う問い合わせ要約の下書きをAIに任せ、佐藤さん自身の作業時間が短くなったら「回答待ちの見積案件への確認連絡」に着手する計画です。AIが作った要約は佐藤さんが元の問い合わせと照合し、確認を終えたものだけ使う想定です。

営業担当が問い合わせ要約を確認し、保留中の見積案件へ連絡する場面

問い合わせには個人情報や取引情報が含まれる場合があります。原文をAIへ入力する前に、入力してよい情報の範囲を社内ルールと利用するサービスの規約で確認してください。入力が認められない情報は、そのまま貼り付けません。

決める欄 架空の記入例
AIに移す作業 届いた問い合わせの要点を、担当者が読むための下書きにする
元の作業の担当 営業担当・佐藤さん。原文との照合と修正も担当
振替先の仕事 保留中の見積案件を一覧から選び、先方へ確認連絡をする
振替先の担当 営業担当・佐藤さん
1件の完了条件 保留中の見積案件1件について確認連絡をし、案件一覧に連絡日時、応答の有無、次の対応を記録する
確認する人 営業責任者・田中さん。記録と未対応案件を確認する

相手が不在でも、連絡した事実と次の対応を記録すれば、この例では1件の確認連絡が完了です。受注や売上増は完了条件に含めません。

要約の原文照合や修正、AIの使い方の相談が増え、元の作業が短くならなければ、見積確認へ回す時間は生まれません。急ぎの問い合わせで予定を変えた場合は、計画と実際に行った仕事を分けて記録します。

同じ人数での変化は作業時間と振替先の完了で示す

経営者が社内へ説明するときは、「元の作業に担当者が使った実作業時間」と「振替先の完了記録」を別々に示します。元の作業が短くなっても、振替先の完了が増えたとは限りません。振替先が進んでも、それだけでAIが原因とは言えません。

元の作業と振替先の完了を別々に確認し、間の確認負担を虫眼鏡で点検する図

架空例なら、AIを使い始める前に、要約の下書き作成から確認・修正まで佐藤さんが実際に手を動かした時間を記録します。導入後もAIへの入力と原文照合・修正を含め、同じ範囲を測ります。既存の問い合わせ記録の受付日・問い合わせ管理番号を使い、「AI利用の有無」と「要約の実作業分数」を追加します。対象期間中は中断を除いた分数を同じ刻み方で記録し、受信から完了までの待ち時間とは分けます。振替先の完了件数と連絡日時は、既存の連絡記録で確かめます。

導入前後は同じ長さの期間で比べ、問い合わせの種類や量、未対応の見積案件数が近いか確認します。完了件数が増えても、依頼量や優先順位が変わっていれば、その差をAIだけの効果とは説明できません。

効果測定で導入前の記録がない場合や、品質・費用も含めて継続を判断する場合は、AI導入後の効果を測り直す方法を参照してください。AI運用そのものの決裁者や代理担当を決めるときは、AI導入の4つの役割分担で整理できます。

まずは着手前に、元の作業、振替先、担当者、1件の完了条件を1枚に書いてください。導入後は元の作業の実作業時間と、振替先で完了した件数を別々に確認します。